国産小型仏壇で人気の黒戸をオーダーメイドで製作しました。

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日本を代表する産地彦根で、こだわりの手造り仏壇を製造しております、井上仏壇の井上昌一と申します。

国産小型仏壇で人気の「黒戸」をオーダーメイドで製作しました。その際の様子をご紹介いたします。

【お客様のお宅へ納品させていただいた黒戸】

 

お客様は彦根市にお住まいで、ご実家に大型のお仏壇をお持ちなのですが、「自宅に小型の仏壇が欲しい」とお考えで、数件の仏壇店を回られた結果、当店へご依頼いただくことになりました。その他のご要望をお伺いしたところ「小さくても扉がついている物が良い」ということでした。

小型のお仏壇といっても、様々な種類がございますので、お客様のご希望やイメージに合うお仏壇を選ぶために、様々なお仏壇をご覧いただきました。その中で「黒戸」をお選びいただいた理由としては、「塗りのお仏壇が良い。小型であっても国産で、質の良い仏壇が良い。」というご希望に、黒戸がピッタリと合っていたからとのことです。

当時、店舗に展示してある商品があり、そちらをお納めしても良かったのですが、お客様はお時間があるというお話でしたので、一からおつくりさせていただくことになりました。

こちらは、出来上がった木地(きじ)を並べているお写真です。(※木地・・・仏壇の土台となる、塗る前の状態のもの)

このようにバラバラの塗りやすい状態で全てを塗ります。ウォールナット(こげ茶色の無垢板)は、透明のウレタン塗装をしています。組み立ててから塗装すると細やかな部分を綺麗に塗ることができないため、先に塗って、後に組み立てます。そうすることによって、接合部分につなぎ目の線が出ます。どこで接合すれば、目立たず違和感がないか、耐久性は保てるかなどを綿密にデザイナーと木地職人と私の三者で検討しています。

 

こちらは向って左側にある小物やお写真を入れる部分です。黒く塗装する部分は、割れたり反ったりがないようにシナ合板を使用しています。

 

一度、木地の状態で仮組みをします。木地の状態で、パーツがきちんとそろっているか、寸法は合っているかの確認をします。

 

仮組みをする理由は、

①きちんと寸法通りにできているかの確認

②塗ると”塗りぶくれ”といって塗料で若干厚みが増すため、少し余裕がないと組み立てられなくなってしまいます。その余裕がきちんと取られているかの確認。

木地職人は、塗りぶくれを計算して作成していますので、仮組みでその最終確認を行います。

 

右側の黒い札裏と、後ろの壁の部分にマグネットがはめ込まれています。お位牌札等、この部分に設置することになるため、きちんとマグネットが機能しているかや木地職人に指示した位置に貼り付くかなどを確認します。

 

扉の蝶番の部分もネジの下穴を開け仮組みし、開閉の確認を行います。塗った後にズレやゆがみが分かった場合、調整が難しいので、木地の状態で一度確認をしておきます。

 

扉を閉じた状態も確認します。

 

塗装が完成しました。

 

小物入れの天井部分に、蓮の花が散っている様子「散蓮華(ちりれんげ)」という、お仏壇によく使われる図柄の蒔絵(まきえ)と彫刻が施されています。(※蒔絵・・・まず漆で絵を描き、漆が乾く直前に金粉を蒔き、漆が乾くと金粉が密着する、という伝統的な技法)

 

塗りの後にも仮組みをします。こちらは扉を閉じた正面からの写真です。

 

こちらは背面のお写真です。右上の空間部分は蒔絵を施したウォールナットが入ります。

 

鏡のように蛍光灯がハッキリくっきりと映っています。歪みがある場合、このように綺麗には映りません。塗りの職人は作業をしながら、まっすぐ綺麗にできているか蛍光灯を映してみて確認します。

 

完成しました!イメージが湧くよう、三具足(すずか)とおりん(清澄)を置いてみました。

 

左は別のお客様からご依頼いただいたもので、右が今回のお客様にご依頼いただいたものです。見ていただくとおわかりになる通り、左は小物入れのないデザインです。制作前にお客様のご要望をしっかりと伺い、細やかな部分もご対応させていただいております。

 

お客様のお宅へ納品へ伺いました。ご自宅に黒戸を置くことのできる丁度良い台をお持ちでなかったため「台もそちらで用意してもらいたい」とご依頼いただいていました。そこで、黒戸専用というわけではありませんが、丁度良い黒色の仏壇台も一緒に納品させていただいています。

 

扉を開くとこのようになります。ご宗派は浄土真宗本願寺派(お西)です。阿弥陀如来のご本尊を中央に、その向って左側に過去帳、手前に仏飯器、その前に三具足(右からロウソク立て、線香立て、花立て)があります。このお写真では おりん が右奥に置いてありますが、お参りされる際にはロウソク立の前あたりにおりんを出していただくようになります。

左側の小物入れにはお経本や故人の思い出の品などを入れていただけます。また、前面にはお写真(L版サイズ)を入れられるような設計になっていますので、故人のお写真や思い出のお写真などを入れていただけます。

 

お客様にはこのようなお言葉をいただきました。ご記載いただき、本当にありがとうございます!

時代が移り変わり、住宅事情も変化したことにより「立派なお仏壇が欲しいけれど、彦根のお仏壇は大きくて自宅に置くスペースがない・・・」と諦めてしまう方がいらっしゃいます。「それならば小型の仏壇を・・・」とお考えの方でも「あまりにも簡単な安っぽい物ではイメージと違う・・・」といったように、「小さければよい」というわけでもない方も多くいらっしゃいます。当店の取り扱う小型仏壇の数々は、今回のお客様のように「小型だけど品質の良い国産が欲しい!」とお考えの皆様のニーズに合ったものだと考えます。

今後も皆さまにお喜びいただけますよう、国指定の伝統的工芸品「彦根仏壇」の伝統工芸士たちが、材料を厳選し、すべての工程を一つ一つ丁寧に、心を込めて手作りいたします。