50年ほど前に購入いただいた彦根仏壇の洗浄。真宗大谷派、甲良町のお客様
ホームページをご覧いただきまして、ありがとうございます。
日本を代表する産地彦根で、こだわりの手造り仏壇を製造しております、井上仏壇の井上昌一と申します。
甲良町のお客様より、お仏壇の洗浄をご依頼いただきましたので、作業のようすをご紹介いたします。
約50年前に当店でご購入いただいた仏壇の洗浄 彦根仏壇4尺3方開き 真宗大谷派 甲良町のお客様
50年ほど前、当店の祖父と父の代にお仏壇をご購入いただいたお客様からお電話をいただきました。当店の名前が入った保険証書(本金箔使用の証)が引出しから出てきたので、ご連絡くださったそうです。「仏壇が古くなって汚れてきたので、一度きれいにしたいのですが」ということでしたので、まずはさっそくご自宅へ伺ってお仏壇の状況を確認させていただきました。甲良町にお住まいのお客様で、当店からは車で20分ほどのところでした。
お引き取り時
こちらはお引き取りの際にとらせていただいたお写真です。傷防止の白布を敷くなど、お仏壇を大切にしてくださっているのが伝わります。お年忌のご予定などは特にありませんでしたが、「時間のある時にきれいにしておきたい」とご連絡くださったようです。
お客様がお仏壇を購入された50年ほど前は、金の価格が高い時期だったため代用金(真鍮箔)を使用したお仏壇も多くありましたが、こちらのお仏壇は証書にもあるように、本金が使用されていました。代用金であれば変色が見られる場合もありますが、今回は本金を使用した質の高いお仏壇でしたので、金の部分には変色がなく、とてもきれいな状態を保っていました。
ただし、金具には青錆が出ている箇所があるなど、一部修理が必要な部分も確認されました。そこで、仏具なども含めて詳細に確認した上で、ご予算などをお打ち合わせし、今回は「洗浄」を中心に、目立った箇所については修理を行う形でご依頼をいただきました。
お引き取り後、工房で状態確認のために写真を撮ります。4尺3方開きの彦根仏壇です。扉の裏側は金が剥げてしまっていました。
お仏壇内部です。一見それほど傷みなどないように見えますが、金具部分には何か所か青錆が見られます。
このような青錆が、金具の釘の部分を中心に見られます。使用している木材に塩分があると、釘がその塩分を吸い上げて、このような青錆が出てしまうことがあります。現在ではしっかり検品をしていますが、約50年前にお仏壇をご購入された当時は、輸入材の使用が始まった時期でもあり、中には海水の貯木場に木材を浸けて保管していたため、木が塩分を吸ってしまっているケースもありました。
お障子を閉めたところです。こちらも右から2番目のお障子の金具に青錆が見られます。青錆部分は金具だけを交換しても効果がないため、木材から交換します。全体の状態を確認したら、すべて解体して洗浄作業に入ります。
解体・洗浄
確認を終えたお仏壇を解体しています。解体後、それぞれ洗浄します。
お仏壇をきれいにする方法として、当店では「洗濯・修復」「洗浄」「掃除」の大きく3通りがございます。「掃除」は、ご自宅へスタッフがうかがって、仏壇・仏具を掃除します。「洗浄」は、お仏壇をお引き取りして工房で分解し、特殊な洗浄剤で洗います。簡易な塗り・金箔直しは含まれますが、基本的には塗り・金箔はそのままで、ススや油煙などの汚れを落として再度組み立てます。気になるところの追加修理がおすすめです。 「洗濯・修復」は、お仏壇をお引き取りして「洗浄」と同じ要領で洗浄しますが、木地直し、塗り、金箔押し、金具メッキなどもすべて行いますので、新品同様に生まれ変わります。
※お仏壇の洗濯や洗浄については、詳しくはこちらをご参考ください >>「洗濯・洗浄」
解体したら、金具から釘を丁寧に抜いていきます。小さな部品まですべて分解していきます。欄間彫刻はすべて木彫りです。当時はプラスチックが使われ始めた頃でしたが、良いものを長く使っていただきたいという思いから、木彫りのものをできる限り使うことにこだわってきた、当店の先代たちの想いも伝わります。
解体を終えたら、洗浄作業です。金箔が貼ってあるお障子の組子を洗浄しているところです。ひしゃくで専用の洗浄剤をかけて、手作業でススやホコリなどをきれいに取り除きます。
洗浄が終わったら、天日干しして乾燥させます。晴れた乾燥した日でないときれいに乾かないので、お天気を見ながら作業します。裏返して乾かしているのは、塗っていない白木部分から水分が浸透しているからです。
お仏壇は、このように細かいパーツをたくさん組み合わせて作られています。こうしたパーツもすべて解体してひとつひとつ洗浄し、乾燥させます。
掛軸表装直し

表装直し 前
また、ご本尊の掛け軸は、取り外してみると表装の破れているところもあって状態が良くなかったので、表装直しして再度お祀りすることになりました。表は阿弥陀様像で、裏側には「裏書」があります。「裏書」は、ご本山からいただかれた掛け軸の裏側に書かれているもので、当時の御門主のお名前と、「方便法身尊形」という文言が書かれています。

表装直し 後 本金襴表装直し
表装直しを終えた掛け軸です。表装はすべて交換して、仏画部分はきれいに汚れを取っています。裏は「裏書」部分を切り取って新しい本紙に貼り付けています。
※お仏像・お仏画の修復については、詳しくはこちらをご参考ください >>仏像・仏画の修理修復
組立て中
洗浄を終えて組み立てが始まりました。金具は金めっきをやり直し、見える前面部分を中心に塗り直しをしました。長年の間に生じたズレやゆがみなども、この段階でバランスを見ながら調整していきます。
正面から見たところです。とてもきれいになっています。このあと扉などもすべて組み上げて、ご自宅までお持ちします。
ご納品
ご納品時のようすです。とてもきれいになりました!
【仏壇】彦根仏壇4尺3方開き
お仏壇内部の蝋燭や灯籠は、LEDに交換しています。以前から電球は入っていましたが、LEDにしたことで、阿弥陀様にスポットライトを当てて中を照らすことができるようになりました。
ご本尊は表装直しを行い、両脇掛け軸は状態が良かったのできれいにお掃除をしています。両脇に下がっている輪灯・五具足などは、お手持ちのものをお預かりしてお磨き不要のセラミック加工を施しました。神前灯篭と、輪灯の上にある飾りの輪灯瓔珞(りんとうようらく)は新調されています。
打敷は、夏用・冬用のものをお求めいただきました。手前の蝋燭立や線香立も新調されて、お磨き不要加工をされています。仏具は、直して使えるものはきれいにして引き続きお使いになり、傷みがひどいなど交換した方が良いものは新調する といった形で、それぞれの状態を確認してご判断いただきました。
お盆までにご納品することができました。お客様は、新品と見間違うほどきれいになったお仏壇が帰ってきて、「やってよかった」と大変ご満足いただけたご様子でした。作業の数か月間、お仏壇をお預かりしていた間は、ご自宅にお仏壇がなく寂しかったとおっしゃっていました。日頃からお仏壇を大切にしてくださっているお客様に喜んでいただけて、本当に良かったと私どももうれしい限りです。この度は、お仏壇の洗浄をご依頼いただきまして、誠にありがとうございました。これからもお子様やお孫様の代まで、末永くお参りいただけますと幸いです。何かございましたら、どうぞいつでもお気軽にお声かけください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※お仏壇の洗濯や洗浄については、詳しくはこちらをご参考ください >>「洗濯・洗浄」