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日本を代表する産地彦根で、こだわりの手造り仏壇を製造しております、井上仏壇の井上昌一と申します。

今回は、東大阪市のお客様よりご購入いただいた、伝統的工芸品 4尺3方開きのお仏壇をご紹介いたします。

 

【伝統的工芸品 4尺3方開き 融通念仏宗】

 

今回のお客様は大きいお仏壇をお探しで、「大きい仏壇といえば」ということで、産地彦根のお仏壇店を何件かご覧になる中で当店にもお越しくださいました。亡くなられたご主人様の一周忌を前に、今あるお仏壇を買い替えたいということで奥様と息子様でご来店いただきました。

 

こちらは以前のお客様のお仏壇です。きれいにお祀りされているお仏壇ですが、「もっと大きく立派なものを」とご希望でしたので、当店に展示されているお仏壇の中から「伝統的工芸品」のお仏壇をご紹介いたしました。

「伝統的工芸品」のお仏壇とは、国の伝統的工芸品の産地として指定されている地域のみで製造され、きちんとした基準に則り、昔ながらの手作りを中心とした技法と素材でできているお仏壇です。彦根で製作されるお仏壇のすべてが該当するのではなく、基準に相当していないものは「伝統工芸品」に当たりません。素材から吟味し、伝統的な技法を駆使して製造しているということで、国内で製造されるお仏壇の中でも最高級のお仏壇です。そうした素材や技法などについてもご説明を差し上げると、ちょうどお値打ちのものが展示してあったこともあり、とても気に入っていただけました。

(「伝統的工芸品」の詳細についてはこちらをご覧ください>>「産地表示・品質表示」)

もちろん、一からすべてを製作することも可能ですが、今回はご相談時、お年忌までにすでに3カ月を切っていましたので、新しいお仏壇を製造するのは間に合いません。そこで今回は納期を優先して、展示品の中から選んでいただいたお仏壇の一部をご希望に合わせてカスタマイズし、オリジナルのお仏壇をお造りすることになりました。

 

こちらはお客様のお宅の押し入れです。以前からあるお仏壇は、向かって右手にある仏間に置いてありました。選んでいただいた新しいお仏壇は大きいサイズでしたので、この押し入れを改造して仏間にすることにされました。ご自宅へお伺いして、お仏壇の寸法から必要な仏間の寸法、コンセントの位置などをご一緒に確認し、仏間を施工する地元の工務店さんともお打ち合わせをしました。

 

後日仏間が完成し、お客様からお送りいただいたお写真です。仏壇の全開優先で一間半(2m70cm)と、通常よりもとても広い仏間になりました。

 

仏間の内部はこのようになっています。壁には本金の金紙(本金が貼ってある金のクロス)を使用され、寺院並みのとても立派な仏間になりました。ここまで豪華で立派な仏間はなかなかありません。

 

【蒔絵下絵】

【デザイナーによるイメージ図提案】

今回は、展示されているお仏壇の障子の蒔絵と前狭間彫刻を、お客様のご希望に合わせて新しく製作、交換します。ご希望を伺って、デザイナーさんが下絵を起こし、イメージ図をご提案、ご確認いただいて進めました。こちらは、お客様ご希望の「桜と松」のデザインです。下絵は通常蒔絵師さんが描きますが、今回ご希望いただいた図柄は、従来のものには近いものがなかなか見当たらず、新しい図案をデザイナーさんに下絵から起こしてもらい、お客様と細かくやり取りをしながら製作しました。

 

お障子の下の引き出し中央には、家紋の蒔絵をお入れします。蒔絵は、まず漆で絵を描き、漆が乾く直前に金粉などを蒔き、漆が乾くと同時に金粉を密着させる伝統的な技法で描かれたものです。今回の家紋は、「丸に蔦柏」というものです。まずは、朱色の盛り上げ漆で形を描きます。何度も何度も盛り上げ漆を塗って盛り上げていき、漆が乾く直前に磨き粉を蒔きます。その上に生漆をコーティングのように塗って磨いて仕上げます。

 

こちらはお障子の蒔絵です。これも同じように、盛り上げ漆を何度も塗って盛り上げ、図柄を描いていきます。金色で表現された地面には、金梨地という純金梨地鈖が蒔かれています。

 

盛り上げ漆を重ね、色の違う磨き粉を蒔いて、仕上がりに近付いていきます。④では、螺鈿(青貝)を貼りつけました。

 

【切っていない状態(地金を0.03ミリに延ばしたもの)と、完成した蒔絵】

こちらは切金(きりがね)といい、地金(インゴット)を0.03ミリに延ばした、金箔よりも300倍厚みのあるものを、漆で貼り付けて模様を描く伝統技法です。松の幹などに使用しています。

 

こちらは螺鈿(青貝)です。印のように、桜の葉の形にカットして、48枚使用しました。こうした細かな工程を経て、蒔絵が完成します。

 

完成した蒔絵です。色彩豊かで、青貝の葉が華やかな桜の木、切金の模様で表現した松の幹など、伝統的工芸品のお仏壇にふさわしい、豪華な蒔絵が完成しました。

 

こちらは、ご納品前のお仏壇内部です。工房でご本尊と両脇の掛け軸を仮設置して、高さやバランスを確認しました。下から見上げたときにきれいにお顔が見えるように調整します。

 

いよいよご納品です。伝統的工芸品4尺3方開きのお仏壇です。外幅4尺(1m20cm)、従来からの彦根仏壇のサイズで、前だけでなく左右にも開く3方開きです。工房で組み上げたものをそのままお持ちして、新しい仏間に設置させていただきました。

 

ご本尊は阿弥陀如来立像です。両脇は本金襴手描き仕立ての最高級の掛け軸で、右側が良忍上人、左が法明上人です。今回は、お仏壇上部の前狭間の彫刻もご希望のものに取り換えさせていただきました。

 

阿弥陀如来立像は、白檀金泥付き、水煙光背・六角台座金箔仕上げです。ご希望で、螺髪(らほつ:丸まった髪の毛)を群青色に塗りました。また、眉間の白毫(びゃくごう)には天然ダイヤモンド、頭部の肉髻(にっけい)には瑪瑙(めのう)を入れています。こちらも、さらに高級な仕上がりとなっています。

 

細かい部品を組み合わせた宮殿や、豪華な装飾を施した柱回りなど、細部まで伝統的な技法を駆使して製作されています。螺鈿(青貝)が埋め込まれた蒔絵や中央引き出しの家紋もきれいに見えています。

 

反対側です。この角度から見ると、3方に開いていることがよく分かります。これだけしっかり左右に全開することは、なかなかできません。とても広い仏間をご用意いただいたからこそです。

 

【六字名号掛軸 小林太玄 本金緞子仕立て】

今回は、仏額とあわせてこの六字名号掛軸もご購入いただきました。仏額も掛軸も有名な大徳寺黄梅院住職小林太玄さんの書です。大変迫力がある書体です。

 

通常は、1間の仏間で3尺(約90cm)ほどの仏額をかけるのですが、今回は仏間が広いので、特別に大きい4尺(約120cm)幅で別注で製作しました。仏額は、必ずかけなくてはいけないものではありませんが、仏間の上が殺風景にならず、厳かな雰囲気がお仏壇をより引き立たせてくれます。和室の壁に書等の額を掛けたり、洋室の壁に絵画を掛けたりするのと同じで、仏額があることで雰囲気が変わってきます。印象では、半数以上の方が飾られているようです。

お客様には、大変喜んでいただくことができました。選んでいただいたお仏壇も最高級のものでしたが、ご用意いただいた仏間はそのお仏壇の値打ちをさらに上げるような大きく本格的なものでしたので、実際に設置するといっそう立派に見えました。ご納品の当日はご親戚の皆様も寄ってくださり、「立派な仏壇ができたね」と皆様に喜んでいただけました。無事にお納めすることができて、皆様に喜んでいただき、胸をなでおろしました。このたびは、誠にありがとうございました。今後も、何かございましたら、いつでもお声かけくださいませ。

今回は、息子さんとLine(ライン)でやり取りをさせていただいて、蒔絵の柄など細かいところまで打ち合わせを進めることができました。昔でしたら細かい点は製作側に一任だったかもしれませんが、昔ながらの技法や伝統は守りながらも、現代のツールを活用して遠距離でも綿密にお打ち合わせができたことで、お客様にもご納得・ご満足いただけるものをお造りすることができました。デザイナーさんに、松と桜というありそうでなかった新しい図案を起こしてもらうことからの蒔絵の製作など、私ども製造側にとっても新たな経験となったお仏壇製造でした。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。