40年以上前のお仏壇のお洗濯。浄土真宗本願寺派、滋賀県彦根市のお客様

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日本を代表する産地彦根で、こだわりの手造り仏壇を製造しております、井上仏壇の井上昌一と申します。

滋賀県彦根市のお客様より、40年以上前のお仏壇のお洗濯をご依頼いただきました。

 

お仏壇の洗濯 滋賀県彦根市のお客様 浄土真宗本願寺派

 

ご相談くださったのは、当店で以前お仏壇をご購入いただいたお客様です。ご主人様がお亡くなりになり、その一周忌をめどにお仏壇の修理をしたいということでした。ご自宅へ伺ってお仏壇の状態を確認し、お見積りをさせていただきました。

 

こちらはお引き取り時のようすです。40年以上前にご購入いただいて、大切におまつりいただいていました。4尺(外巾約124㎝)3方開きの立派な彦根仏壇です。お蝋燭やお線香を焚いた油煙ですすけて黒くなり、漆塗りもツヤがなくなり、金箔も輝きがなくなってしまっています。40年程度経ったお仏壇と考えると状態としては傷みや汚れが大きいようですが、これはよくおまつりされていた証でもあります。ちょうど修理の時期を迎えていたようです。

 

お仏壇内部です。中央の阿弥陀様上部の彫刻も、油煙や煤で変色しているのが分かります。そのほか仏具も、木製のものは壊れているものありました。左右に下がった輪灯も油煙で黒くなっています。こちらは真鍮でできているので年二回ほどお磨きをする必要があるなど、少し手間がかかる仏具です。漆を塗った部分にも、傷が入っている箇所が見られました。すべて大切にお引き取りして工房へ持ち帰ります。

 

解体前・解体中

持ち帰って梱包を外したら、分解する前にまずは検品を行います。ご本尊や仏具などを取り外した状態です。どこがどのように汚れているか、損傷等があるか、全体を確認します。

 

宮殿の屋根、丸みのある破風(はふ)部分も真っ黒になっています。もともとは金色でしたが、ちょうど真下で蝋燭を焚かれていたので、特に汚れが強いです。

 

確認を終えたら、分解していきます。上から順に分解していき、半分以上の分解を終えたところです。後方に、取り外した柱が見えています。お仏壇のお洗濯では、全ての部品を分解してから洗浄をします。

 

洗浄・乾燥

分解を終えて、洗浄作業に入りました。水洗いをしてしまう方が簡単なのですが、水に弱い木材なので、水に浸けると割れたり反ったりすることもあり、当店では細かい部品以外はこのように手作業で丁寧に水拭きでふき取っています。

 

手前では、彫刻が入っていた枠部分を洗浄しています。洗浄液を刷毛で付けて、それを手でふき取るという作業です。

 

屋根や彫刻など、造りが複雑な部分は手作業でふき取るのはとても難しいため、油煙を落とすことができる洗浄液が入ったお湯につけて、その薬液をかけながらきれいにします。入っているのは鉄製の大きな鍋で、それをコンロで温めて作業をします。お湯が黒くなっているのは、それだけ油煙が取れた証拠です。

 

洗浄を終えて、乾燥させています。高欄(欄干)を見ても分かるように、油煙が落ちてかなり輝きが戻っています。金が貼ってある部分を裏側にして、木のままの部分が乾き易いように上向けて乾かしているところです。

 

木地直し 塗り上がり 組み立て

 

 

洗浄が終わったら、仮組をして木地直しをします。木地直しは、割れや反り、歪みがないか、開閉部分はきつくないか、ゆるくないかなどを確認し、手直しする作業です。下の方の3段になっている部分で白く見えいている箇所(金箔が貼っていた面)は、すでに削って調整をした箇所です。漆を塗り直す前に、一度組み上げて調整を行います。

 

こちらは御文章箱(ごぶんしょうばこ)で、上が箱、下は台になっており、普段はお仏壇に収納されています。印のある右側の脚が折れていたので、同じ形で木地師さんに白木で作り直してもらいました。後ほど金箔押しの工程で、金箔を貼って仕上げます。

 

こちらは御文章箱が入っているところの蒔絵です。親鸞一代記という図柄ですが、ご希望で今回図柄を変更することになりました。

 

【花鳥の図柄】

洗濯では、以前の蒔絵の図柄をすべて消して塗り直すため、どんな柄でも描くことができます。同じ図柄を描き直すこともできましたが、今回は、お客様のご希望で当店で一番人気の花鳥という図柄をお選びいただきました。

 

塗り直しが終わったら、金箔を押す前に仮組をします。見えるところにきれいに塗れているか、どこに金箔を押せばよいかなど、細部を再確認します。黄色く塗ってある部分が金箔を貼る予定の場所です。

 

金箔を押し終えて、組み立てをしています。周りには、洗浄や塗り直し等を終えた部品が置いてあります。ひとつひとつ組み上げていって、完成となります。

 

完成・ご納品

ご納品時、輝きを取り戻したお仏壇です。まるで新品のようにきれいになりました。

 

ご本尊と両脇の掛け軸は状態が良かったため、すす払い程度できれいにしました。両脇は親鸞聖人と蓮如上人の両大師です。仏具のうち、五具足・灯篭・隅瓔珞(すみようらく:灯篭の横のかざり)・経机・戸帳は新調いただきました。五具足は当初は古いまま使おうとお考えでしたが、実際にきれいになったお仏壇に置いてみると他がきれいになった分どうしても目立ってしまい、新調することにされました。輪灯はもともとお持ちだったものをきれいに洗浄してセラミック加工(お磨き不要加工)を施しました。

 

お仏壇の中に灯っている蝋燭はLEDです。お仏壇の中でお線香やお蝋燭を焚くことはなくなるので、油煙や煤でお仏壇が汚れる心配もありませんし、火を使わないので安全です。日々のお参りでは、手前の経机でお線香やお蝋燭を焚いていただけます。

 

お客様はとてもきれいになったお仏壇にびっくりされて、喜んでくださっていました。ご主人様の一周忌にも間に合い、費用もお時間もいただきましたがそれにふさわしい修理をしてもらえたと大変喜んでいただけました。良いお仏壇を毎日大切にお参りされていたお客様に、今後はより安全に快適にお参りいただけるようになり、本当に良かったです。このたびはご用命ありがとうございました。今後も何かお困りの際は、お気軽にお声かけくださいませ。

今回のお仏壇は、ご購入いただいてから40年以上経って初めてのお洗濯でした。お仏壇のお洗濯は、状況によって3度くらいは可能ですが、初めてのお洗濯は修理箇所もそれほどないため2度目3度目ほど費用をかけずに購入当時のようにきれいにすることができます。お仏壇が古くなった場合、新しく買い替えることも選択肢ではありますが、昔の職人が丁寧に造り上げた良いお仏壇であれば、お洗濯で新品同様によみがえらせることができるとご存じの方は、まだ少ないのではないでしょうか?お仏壇のお洗濯は、これまで大切にしてきたお仏壇をきれいな状態で次の世代に残すことができますし、同じものを買い替えるのに比べても費用を半分以下に抑えることもできます。ご興味のある方は、ぜひ一度お気軽にご相談いただければ幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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