50年ほど前に作られた大阪仏壇のお洗濯(修復)が完了しました。融通念仏宗、大阪府松原市のお客様

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日本を代表する産地彦根で、こだわりの手造り仏壇を製造しております、井上仏壇の井上昌一と申します。

今回は、大阪府松原市のお客様よりご依頼いただきました、大阪仏壇のお洗濯(修復)の様子をご紹介いたします。

 

今回は、ご主人様を亡くされて3回忌を終えられた奥様からのご相談でした。奥様のお姉さまが数年前に当店でお仏壇をご購入くださったのがご縁で、ご紹介いただきました。50年以上経っているお仏壇で古くなってきたので、お洗濯をしてきれいにすることを検討されており、ご主人様のお年忌も3回忌まで無事終えられたので、ゆっくり手間をかけてお洗濯してもらえるから ということで、今回ご相談をいただきました。

ご連絡いただいて、まずはご自宅に伺って詳しくお話をさせていただきました。

昭和43年にご購入の大阪仏壇です。古くなり傷んでいるところもありましたが、良いものであることはすぐに分かりました。ですので、できれば手間をかけてしっかりと、このお仏壇にふさわしい方法でお洗濯をさせていただくことをご提案しました。お仏壇を新調するという方法ももちろんありますが、先代から大切に引き継いでこられたお仏壇だからということで、お客様も新調ではなくお洗濯をご希望され、任せていただけることになりました。多少費用や手間がかかっても新品同様にきれいにしたいということでしたので、お時間のある時期にご相談いただけてよかったです。

 

仏像と両脇の掛け軸は、お客様からのご相談で今回新調させていただくことになりました。お仏壇の様子から、とても大切にされているのがよく分かります。お引き取りさせていただき、大切に工場に持ち帰ってお洗濯をさせていただきます。

 

お仏壇のお洗濯の工程は、

お引き取り → 分解 → 洗浄 → 乾燥 → 木地直し → 塗り → 金箔押し・蒔絵 → 金具 → 組み立て → 納品

の順になり、各工程の間には、確認や検証・検品を行います。今回のお客様には「おすすめコース」をお選びいただきましたので、塗りや金箔押し・蒔絵もしっかりと時間と手間をかけて、新品同様にきれいにさせていただきます。
(お洗濯の詳細はこちらをご覧ください→「洗濯・洗浄」

 

工場に持ち帰りました。仏具等は取り外してあります。この後解体してお洗濯しますので、お仏壇の状態の確認等を行っていきます。

 

お仏壇正面の彫刻部分です。ここには細かな彫刻が施されています。

 

人物が数体と龍などの彫刻は、すべて彩色されています。大阪仏壇はこのように色がついていることが多いです。ほこりで白っぽくなってはいますが、この彫刻も良いものでした。お仏壇の内部の、仏像の台座にあたる須弥壇(しゅみだん)にも同じような彫刻がありました。

 

お仏壇のお障子を閉めたところです。こちらは「円窓」という丸い窓のついたお障子です。円窓の下には桐の花、上には鳳凰、雲の蒔絵が施されています。こうした蒔絵も描き直してきれいにします。

 

円窓下部の腰蒔絵です。こちらも今回描き直します。工程としては、写真を撮ったり紙に同じ大きさで写して下絵を取っておいたりして、一度すべて消してからまた同じものを描き直すという作業になります。これを消さずにそのままでお洗濯する方法もありますが、一旦消して描き直すことですっきりときれいに仕上げることができます。今回は手間をかけてじっくりお洗濯させていただくことができますので、一旦消して描き直す方法を取りました。

 

こちらは須弥壇(しゅみだん)の彫刻です。こちらも彩色してありましたが、ほこりでずいぶん白く見えています。

 

蒔絵の施された引き出しです。中央は引き出し部分で、その周りは引き出しの枠ですが、引き出し部分と枠に絵柄がまたがって描かれています。大阪檀は、かざり金具を打たずにこうして蒔絵が描かれているのが特徴でもあります。この蒔絵も下絵を取り、一旦消して描きなおしです。

 

内部の彩色された小柱です。金箔の上にカラフルな彩色が施されていましたが、ずいぶん剥離してしまっています。こちらも同様に下絵を取って剥がし、その後塗り直して金箔を押し直し、彩色をするという工程になります。

 

下絵を取ったりといったすべての確認を終えると、洗浄の作業に入ります。彩色なども取れてしまいますので、この作業の前にしっかりと確認を終えておかなければなりません。洗浄剤をお湯で溶かして汚れた部品につけます。

 

洗浄剤のあと、丁寧にすすぎ洗いをして汚れをとっていきます。彫刻等は水洗いしますが、お仏壇本体を水で洗うと割れや反りの原因になったり塗装が剥がれたりしますので、手拭きできれいにします。それぞれに適した洗浄をします。

洗浄が終わると乾燥させて、木地直しの工程です。

 

木地直しに入ります。仮組みをして、ゆがみ等がないか確認し、木地の悪いところは交換したり調節したりします。洗浄しただけで塗り直しなどはまだですので、汚れは取れていますがツヤなどはまだ良くありません。このあと漆塗りの工程になりますが、こういった調整等は塗ったあとにはできないので、この段階でしっかりと確認し調整を行います。

 

さきほどの彩色された小柱です。彫刻は付いていますが彩色部分はとれています。

 

これも仮組みをして、まっすぐ垂直に立っているか、ゆがみがないかなどの確認をします。具合の悪いところがあれば調整をします。

この後、漆塗り、金箔押し、蒔絵や彩色などの工程を経て最終的な組み立てをし、完成・ご納品となります。

 

ご納品のときの様子です。仏間もリフォームされていましたので、きれいになったお仏壇がより映えます^^ ご宗旨は融通念仏宗です。

 

お仏壇内部です。金箔も新しく押し直して、輝きを取り戻しました。今回、両脇の灯篭などお仏壇内部の照明はすべてLED照明です。仏像の上からもLED照明をつけました。電球の寿命が長いため、狭くて手が届かないような場所でも取り付けることができ、温度も上がらないので籠ったお部屋の中などでは安心です。仏像と掛け軸は今回新調されたものです。

 

仏像と掛け軸の脇に、きれいに彩色された小柱があります。色がとれてしまっていましたが、鮮やかな色がよみがえってお仏壇内部が明るくなりました。

 

彫刻部分です。ほこりで白っぽくなっていましたが、きれいに洗浄して彩色しなおしました。人物や龍、緑の彩色部分は松の木です。

 

お障子を閉めた状態です。円窓の蒔絵もきれいに描き直して、新品同様にきれいになりました!

 

円窓です。一度前の蒔絵をすべて消して、新たに施した蒔絵です。
立体感を出すため何度も漆を塗り重ねて厚みを出し、最後に塗った漆が乾く直前に上から金粉をふりかけます。すると漆が乾くのと同時に金が密着していきます。さらに細かな工程を経て、こうして立体感のある蒔絵が完成します。鳳凰の尾羽の先端には、青貝を埋め込んであります。50年ほど前に新調されたときは、くすみ等のない、こういったきれいな輝きを持っていたと思います。

 

お客様は完成したお仏壇をご覧になって、新品のようにきれいになったことに驚かれるとともに、大変喜んでくださいました。私でも新調と見間違うくらいにきれいになり、職人さんたちも「良いお仏壇に仕上がったね!」と好評でした。今回お洗濯させていただいた大阪仏壇は蒔絵や彩色がとても多かったため、予想より完成までに時間がかかりました。お客様のご都合等もあり、お引き取りから10ヶ月ほど経ってのご納品となりましたが、その分時間をかけて丁寧にきちんとした仕事をすることができました。その甲斐あってお喜びいただけて良かったと思います。

このたびは、遠く彦根の当店にお任せくださり、本当にありがとうございました。長いことお待ちいただいたのでご不安もあったかもしれませんが、信頼して待ってくださったおかげで本当に良い仕事ができました。今後もこれまで通り大切にお守りいただけますと幸いです。少し遠くなりますが、何かご用の際はどうぞお気軽にお声かけください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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