4尺前開き、赤梨地塗りの華やかなお仏壇。真宗大谷派、滋賀県大津市のお客様

ホームページをご覧いただきまして、ありがとうございます。

日本を代表する産地彦根で、こだわりの手造り仏壇を製造しております、井上仏壇の井上昌一と申します。

滋賀県大津市のお客様のお宅へ、赤梨地塗りで華やかな仕上がりの、4尺(巾115㎝)前開き 真宗大谷派のお仏壇をご納品させていただきましたので、ご紹介いたします。

 

滋賀県大津市 真宗大谷派 4尺前開き 商品名:梅花(特注)

 

大津市にお住まいのお客様に、お父様の3回忌を機にお仏壇をお買い換えいただきました。お話をうかがったところでは、今回のお買い換えにあたって、色々な地域でたくさんのお店をまわられたそうです。

お住まいの大津市はお隣が京都ですので、まずは京都を見てまわられたそうですが、ご希望とご予算に合ったものが見つからず、滋賀県内も見てまわることになり、彦根でも他のお店をまわられたということでした。それまでに見たお店のなかの一軒で決めようかと思っていた頃、最後にお越しくださったのが当店でした。展示品のお仏壇そのままではなく、彫刻や蒔絵をお好みのものに変更できる点にとても興味を持っていただけました。その際に、お仏壇をお探しの方にいつもお渡ししている当店作成の小冊子(失敗しない仏壇の選び方)をお持ち帰りいただき、ご検討の末、後日再来店下さいました。

展示品の中には、お客様のご宗派(お東)と寸法を満たすものがなかったので、木地から製造することになり、「せっかく作るなら」ということで、お客様のお好みに応じてカスタマイズして製造することになりました。木地は、ワンランク上の木地があったので、それを使用しました。ご希望の寸法は、現在のお仏壇と同じサイズだったので、高さだけ少し調整して対応しました。お客様のご希望である彫刻や蒔絵などの仕様を、細かい点までお聞きして製造を進めていきます。

 

木地

お仏壇の下地となる木地です。こちらは雨戸とお障子を取り外したところです。上部の狭間(さま)彫刻は、お客様のご希望で「親鸞一代記」となっています。

 

雨戸(扉)を閉めるとこのようになります。雨戸とお仏壇上部一番上の部分は他の部分と色が違っていますが、新しく作って追加したものです。雨戸は裏側に杢目が出る仕様に変えるため、上部は高さ調節のために作り替えました。

 

お障子を閉めた状態です。このあと、パーツごとに分解して塗装の工程に入ります。

 

塗装完成

塗り上がった状態です。下地から何度も塗り重ねて、つややかに仕上がっています。

 

側面です。周りの景色を写すつややかさです。黄色い部分は、このあと金箔を押す部分です。お仏壇前面の木目が感じられる部分は、ご希望で通常よりも赤みを出して仕上げています。通常はもう少し濃い赤になるので、木目もこれほどは目立たなくなります。

 

お仏壇内部です。お仏壇のパーツでいうと、下段・中段と呼ばれる部分は「赤梨地塗り」といって、こちらも特別にご希望をいただいたものです。赤い色の塗料をベースとして、梨地粉という粉が蒔(ま)いてあります。果物の梨の皮のようにプツプツした粒が見えるので、梨地と呼ばれるようです。この部分は一般的には黒梨地となっていることも多いのですが、ご希望に沿ってこのように変更しました。

 

組み立て中

金箔を押し(貼り)終えて、組み立てに入りました。ご本尊を安置する須弥壇や、錺り(かざり)金具なども取り付けています。

 

先ほどの下段・中段部分です。赤梨地部分は先ほどと同じですが、光線の違いでこのような濃いめの色合いにも見えます。須弥壇左右の彫刻も、特別にご希望いただいてお好みの人物柄に変更しました。

 

豪華な屋根や柱を組み上げて、宮殿(くうでん)を載せました。別で制作したひとつひとつのパーツを順に組み上げていきます。

 

こちらの蒔絵もご希望に合わせて、山水の柄としました。また、青貝(螺鈿)を多めにしたいというご希望もいただいたので、通常よりも2~3倍多く使用しました。とても華やかな仕上がりになっています。

 

組み立て完了

上部の狭間彫刻なども順に組み上げていき、扉やお障子も取り付けて、工房での組み立てが完了しました。4尺前開き、当社での商品名は梅花(特注)といいます。一番外側の雨戸(扉)や障子框(かまち)も、さきほどの下段・中段と同じ「赤梨地塗り」ですが、光の当たり具合で表情も違います。

 

雨戸框の赤い部分は、梨地の仕上がりの様子がよく見えますね。単色ではモノトーンになりがちですが、こちらは奥行きや深み、高級感が感じられます。雨戸裏は、通常は杢目がないところに金箔を押すのですが、ご希望で杢目がきれいに出るように塗り、金粉を蒔きました。雨戸を新たに作り替えたのはそのためでした。目はじき(木目出し)金粉仕上げといって、落ち着いたツヤ消し仕上げとなっています。金粉は、金箔よりも材料代が高く、見た目も落ち着いた仕上がりになるので、高級な仕上げとなります。

 

障子には腰蒔絵を追加しました。木地の段階ではここには蒔絵はなかったのですが、途中で「ここに蒔絵を入れてほしい」とご希望いただいたので追加したものです。横桟を付けただけでは耐久性に劣るので、障子框をすべて交換して対応しています。こちらの蒔絵は、私も大好きな花鳥の図柄です。中段下の蒔絵と同じように、青貝(螺鈿)を多めに使用しています。

 

お障子を閉めた状態です。障子の木地を作り直して追加した腰蒔絵があることで、とても華やかですね。

 

ご納品

ご納品時の様子です。手前には中尊卓・経机、内部には仏具も設置しました。朱で統一されてとてもきれいです。ご自宅に入ると、また色合いが違って見えます。

 

ご本尊と両脇の掛け軸(九字十字名号)は、以前からお祀りされていたものの状態が良かったので、すす払い程度でそのまま使用しています。お父様が数年前に直されていたそうです。仏具は、お仏壇に付属している仏具から、こだわった最上級のものに変更されました。輪灯や五具足などは、すべて本消しメッキ+セラミック加工(汚れが付きにくい加工)を施しています。耐久性を上げつつ、見た目の高級感も演出しています。

 

木地の写真で述べましたが、お仏壇上部にある狭間彫刻は、「親鸞一代記」という図柄です。こちらもご指定いただいたものです。ご宗派に合った、見た目にも立体感がある人気の図柄です。写真中央に見えている大柱は、上部にお東の紋を、下には家紋を金具で入れました。ここに家紋を入れることは珍しく、また家紋も通常の丸梅鉢とは少し違っていたので、見本をいただいて忠実に手彫りで制作しました。

 

仏壇内部(上部)と中段下蒔絵部分には、テープ状のLED照明を装着しました。蒔絵部分に設置したのは初めてでしたが、「蒔絵を輝かせたい!」というご要望で、特別にお付けしました。また、手前にある豪華な打敷(うちしき)は、お選びいただいた鳳凰の柄で、手刺繍で仕上げられた高級仕様となっています。

 

お座布団も柄をお選びいただいたものです。せっかくお仏壇を作るのだからできることは希望通りにしたいと、細かい点までこだわっていただいたお客様に寄り添って、ご満足いただけるお仏壇に仕上げることができました。完成後お客様にもお伝えしたのですが、実は、「赤梨地塗り」で仕上げた部分の色目がお客様のご希望通りになるのか、少し不安に思うところもありました。お仏壇をひと目ご覧になったお客様は、「いい色になった!思ってた色や!」と大変喜んでくださり、嬉しく思うとともにホッとしました。このたびは数ある仏壇店の中から当店をお選びいただきまして、ありがとうございました。大変光栄に感じております。今後とも末永いお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。当店でお役に立てることがございましたら、いつでもお気軽にお申し付けくださいませ。

今回は、展示品のお仏壇を見本として、お好みに合わせたカスタマイズをしたお仏壇をご紹介しました。雨戸やお障子、蒔絵・彫刻などの細かい点の変更は、産地の仏壇店であるからこそ対応ができる点で、お客様にも大変喜んでいただいています。現在では、このような細かい対応ができる店は少なくなってきています。ご希望やご予算に合わせて細かい対応が可能ですので、なかなか希望に合うお仏壇が見つからないとお困りの方は、お気軽にご相談いただけば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

お客様のお声はこちらでご紹介しています⇒