100年以上経ったお仏壇の洗浄のご依頼。滋賀県蒲生郡日野町のお客様

ホームページをご覧いただきまして、ありがとうございます。

日本を代表する産地彦根で、こだわりの手造り仏壇を製造しております、井上仏壇の井上昌一と申します。

滋賀県蒲生郡日野町のお客様より、100年以上が経ったお仏壇の洗浄をご依頼いただきましたので、ご紹介いたします。

 

滋賀県蒲生郡日野町のお客様  浄土宗のお仏壇 洗浄

 

ホームページをご覧になったお客様から、お仏壇の洗浄のお見積りをご依頼いただきました。当店からは車で約1時間ほどの距離にある蒲生郡日野町のご自宅へ伺って、お仏壇を拝見させていただくことになりました。

 

こちらはお引き取り時の様子です。お拝見したところでは、100年以上は経っていると思われました。その間に修理は何度かされているようです。あとで分解してみてわかったのですが、彦根仏壇の技術はそれほど使われていませんでした。ただ形としては、滋賀県内でよく見られるお仏壇でした。

お客様は、全体にすすけている点や、塗りがめくれてきていたり、金箔がはがれていたりする点を気にされていました。前に修理されてからも4,50年は経っているようでしたので、そろそろまた修理の時期が来ていたようです。ご家族様の法要も控えているとのことで、それに向けてお仏壇をきれいにしたいということでした。

当店では、古くなったお仏壇をきれいにする方法は、新品同様に生まれ変わる「洗濯・修復」、気になるところだけ手を入れる「洗浄」、ご自宅の仏間に置いたままで行う「掃除」の大きく三通りでご案内しています。かかる期間や費用などで違いがあり、ご希望やご予算にあった方法を選んでいただくことができます。その場でそれぞれの違いをご説明してお見積りを差し上げると、今回はご予算にも叶う「洗浄」をご依頼いただきました。

 

解体前

 

お仏壇をお引き取りして工房へ持ち帰ってきました。仏具等は取り外しています。洗濯や洗浄では、お仏壇を一旦分解してきれいにします。分解する前には、割れたり反っていたりといった不具合のある場所を確認します。あわせて、あとで組み立てる時の参考にするため、彫刻の位置や柄なども細部まで写真に収めておきます。

こちらのお仏壇は、仏間から出したときに裏側(底面)に虫食いがあり、見た目よりも損傷が激しいことが分かりました。お見積り時には分からなかった点です。その場でお客様にお伝えして見ていただき、土台を補強した方がよいことをお話ししました。

 

お仏壇の内部です。金箔がすすけてくすんでいます。宮殿の屋根の中央あたりや上部の彫刻のあたりは、蝋燭などを焚いたときの油煙で茶色くなっています。彫刻部分は内側から煙が抜けていくので、表だけでなく裏側も汚れています。

 

お障子を閉めたところです。お障子の細い骨組み(組子)部分も折れていたり、虫食いによる損傷があったりしました。漆を塗った部分や金具もツヤがなくなっています。

 

掛軸

本尊両脇の掛け軸は、右は善導大師、左は法然上人、浄土宗の両大師様です。周りの金襴部分は変色して、全体的に傷んでいました。

 

裏側です。こちらも紙が古くなっています。こちらは新調されるか修理されるかをお客様とお話して、昔からお祀りしている絵(本紙)の部分は残し、周りの金襴部分を表装直ししてきれいにすることになりました。

 

洗浄

お仏壇は分解を終えると、洗浄の工程に入ります。写真では宮殿の屋根部分を洗浄しているところです。洗浄液につけて洗い、油煙などをきれいに取り除きます。

 

その後は水ですすぎ洗いをします。障子組子を洗浄しています。この時は洗浄しましたが、傷みが激しかったため、その後障子組子は交換新調に変更しました。その他の細かい部品も丁寧に洗い、天日にて乾燥させます。

 

木地直し

洗浄後、木地直しの様子です。一旦組み立てて、きつい部分などがないか全体的に不具合を確認します。白木の部分は、虫食いや反りで傷みがひどかったため今回交換した箇所です。

 

裏側(底面)です。こちらはこのように補強の木材を入れて、これまではなかったコロ(キャスター)を付けました。移動がしやすくなるだけでなく、床との間に少し隙間ができるので、底面に空気が循環して湿気等を少なくする効果もあります。

 

扉を閉めるとこのようになります。今回、扉とお障子、各4枚は新調・交換しました。当初はそのままきれいにして使う予定でしたが、思ったよりも虫食い損傷などで傷みが見られたので、お客様と再度お話して交換することになりました。

 

お障子です。細い骨組みの組子は入っていない状態です。当初の予定とは変更になりましたが、これからも長く安心してお祀りいただけるように、手直しを行いました。木地直しが終わったら再度解体して、塗りの工程に入ります。

 

組み立て

塗りを終えてから金箔押しの工程も終え、いよいよ組み立ての工程に入りました。金箔部分はそのままで、金箔を押さない塗りの部分を中心に塗り直し、くすんでいた金箔も押し直して、全体にツヤが戻りました。本体を順に組み立てていき、内部の宮殿、上部の彫刻などもはめ込みました。

 

洗浄の場合は、塗り直したり金箔を押したりするのは必要な箇所だけに行います。見えなくなる箇所やそのままでも十分な箇所はきれいにお掃除をして仕上げて費用面も抑えることができます。

 

ご納品

ご納品時のようすです。全体にすすけてしまっていたお仏壇が、ツヤを取り戻しました。

 

ご本尊は比較的状態が良かったので、ほこりや煤をきれいに洗い、光背と仏身のホゾ穴を調整してグラつき等を直しました。両脇の掛け軸は、新しい本金襴裂地を使用して表装直しをしています。

 

輪灯(明かりの灯っている両脇の飾り)は、お持ちのものに色を付け直して仕上げました。三具足(花立・香炉・蝋燭立)、隅瓔珞(すみようらく:灯篭の外側のキラキラした飾り)、常花や茶湯器などは古くて傷んでいたので、きれいになったお仏壇に合わせて新調をご希望いただきました。輪灯の燈明・電気蝋燭・以前からのものをきれいにした灯篭は、すべてLEDに交換しています。今後はお仏壇の中で火を焚くことがないので、油煙などでお仏壇が汚れてしまうこともありません。

 

日々のお参りでは、手前に設置した経机で蝋燭やお線香を焚かれることになります。思わぬ修理などもあってご納品が法要前ギリギリの時期になってしまいましたが、なんとか間に合わせることができました。お客様にもきれいになって良かったと大変喜んでいただくことができました。きれいになっただけでなく、悪い部分の交換や補強等も行ったので、お孫様の代まで安心してお祀りいただけるお仏壇になったと思います。見違えるようにきれいになって帰ってきたお仏壇の様子は、立ち会ってもらったお孫様の心にも残ったのではないでしょうか?何十年後になるかは分かりませんが、また修理が必要になった時に、「あの時はおじいちゃんがきれいにしてくれたなぁ。」と今回のことを思い出されるかもしれませんね。お仏壇を通じてご家族のつながりができていくこともあるのかなと、嬉しく思いました。このたびは、数ある仏壇店の中から当店にお任せいただきまして、ありがとうございました。今後なにかお困りの際には、どうぞお気軽にお申しつけ下さい。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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