長浜市のお客様より、浜壇のお洗濯(おすすめコース)のご依頼。浄土真宗本願寺派

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日本を代表する産地彦根で、こだわりの手造り仏壇を製造しております、井上仏壇の井上昌一と申します。

今回は、長浜市のお客様より、浜壇のお洗濯(おすすめコース)をご依頼いただきましたのでご紹介いたします。

 

お洗濯(おすすめコース)  浜壇 浄土真宗本願寺派 長浜市のお客様

 

私の親戚で、以前から修理や仏具のご購入などお世話になっている方からご相談をいただきました。長浜市にお住まいで、ご自身が定年退職を迎えられて落ち着いた時期に、お母様の7回忌に向けて古いお仏壇をなんとかしたいというご相談でした。

ご自宅にあったお仏壇

こちらが、以前からお参りされていたお仏壇です。浜壇(長浜壇)といって、一間仏間にいっぱいいっぱいに入る、この地方特有のとても大きく立派なお仏壇です。ただ、作られてから200年近く経っているので、お洗濯や修理ができない状態でした。とはいえ、これだけの大きなお仏壇は、新しいものを求めるとなるとかなりの費用がかかります。お客様もそのことはご承知で、それほどの費用はかけられないし…とお悩みになってご相談くださいました。

そのときお話しの中で、「中古でも良いので古いもので出物がないかな?」というお尋ねがお客様の方からありました。実はちょうどそのとき、ご不要になって引き取り、ご供養させていただいたものの、品質も良いので処分してしまうのがもったいないお仏壇が当店にありました。そこで、早速そのお仏壇をご覧いただきました。すると、「こんないい仏壇なら申し分ない」ととても気に入っていただけたので、そのお仏壇をお洗濯してご納品することになりました。

※お仏壇の「洗濯・洗浄」についてはこちらをごらんください>>「洗濯・洗浄

お洗濯するお仏壇・解体前

こちらがそのお仏壇です。作られて30年くらいしか経っていませんが、将来守っていく方がおられないというご事情で処分することになり、引き取り、ご供養させていただいたものです。

 

扉を閉めた状態です。まだまだ新しいのでとても状態がよく、そのままでもご納品できるような状態ですが、今回は準備されていた費用でお洗濯をして、新品同様にしてお納めすることになりました。

 

解体前、解体中

お仏壇内部です。宮殿(お屋根)の部分です。ほとんど傷みもなく、良好な状態です。

 

お屋根を外して解体しています。お仏壇のお洗濯は、お引き取り → 分解 → 洗浄・乾燥 → 木地直し → 塗り直し → 金箔押し・蒔絵・金具表面加工(メッキ・色付け)→ 組み立て の工程を経て、ご納品となります。まずは細部の状態を確認して、記録を取ったあと解体していきます。

 

お仏壇を寝かせて解体しています。この浜壇は少し特殊で、立てたままでは解体ができないところもあるので、仰向けに寝かせて解体を進めます。

 

左は内部の細い柱などを分解したものです。右側は本体の枠の板などのもう少し大きな部品です。奥に見えているのは扉です。ひとつずつ解体して、これから取り付けてある金具や釘を抜いて洗浄します。

 

洗浄 乾燥

金具の釘を抜いて金具を外したら、ひとつひとつ丁寧にタオルで拭き上げて汚れを取っています。水に浸けると木材が反ったり割れたりする可能性があるため、当店では面倒でも手作業で丁寧に水拭きしていきます。

 

内部の細かい部品も、ひとつひとつ分解して洗い、陰干しします。塗った部分より乾きにくい白木の部分を表にして置いています。

 

木地直し

乾燥が終わったら、歪みや反り、傷みなど、土台の悪いところを直す「木地直し」を行います。引き出しがきつくないか、虫食いがないかなどを確認して必要な修理を行います。

 

また今回、お仏壇の手前中央(中段)に、もともとのお客様のお手持ちの前卓(まえじょく)を載せることにしました。ただ、設置場所の奥行きが足りなかったので、印のように中段に4cmほど白木を継ぎ足し、奥行を増やしました。これで、前卓を載せることができるようになりました。

金具交換

お仏壇内部の小柱の金具一部と障子の金具一式は、交換することにしました。こちらは新しい小柱の金具で、これから金メッキをするところです。

 

こちらはお障子の中央八双金具です。このお仏壇のために、細かい模様を毛彫した手彫り金具を製作しました。

 

こちらもお障子の金具です。L字やT字は障子の枠の角の部分に取り付ける金具です。こちらもこれから金メッキをして仕上げます。

 

組立

その後、金箔押しの工程まで終えて、いよいよ組み立てに入りました。きれいになった金具も取り付けられています。

表装直し

本尊掛軸 表装し直し 本金襴仕立て

今回は、お手持ちのご本尊掛け軸を新しいお仏壇にも祀られることになりました。ただ、古くなっていたので表装直しを行いました。

【表装し直し前】(表・裏・裏書)

【表装し直し後】(表・裏・裏書)

阿弥陀様の絵の部分はきれいに洗って再利用、周りの部分をすべて本金襴仕立てで表装し直しています。裏は、伝統的な方法通りに裏書を残して直します。裏書は、掛け軸の裏側に書かれているもので、その当時の御門主のお名前と、「方便法身尊形」という文言が書かれています。以前のものも裏書が貼り付けて残されており、以前にも表装直しが施されていることが分かります。

 

法名軸 表装し直し 本金襴仕立て

こちらは代々のご先祖様のご法名が書かれている法名軸です。こちらもご本尊と同じように表装直しをしました。古い法名軸の裏側にはガムテープで補修されています。

【表装し直し前】

【表装し直し後】

ご法名の書いてある本紙はきれいに洗い、周りの表装は同じく本金襴仕立てです。表装直しまでのすべての工程を経て、ご納品となります。

 

ご納品

お洗濯を終えて新品同様にきれいになった、一間仏間にぴったりの浜壇のご納品です。幅は約145cmあります。

 

ご本尊は表装し直したもので、両脇の掛け軸は新調させていただきました。仏具はもともとお客様が古いお仏壇で使われていたものの状態を見て、可能なものは表面色付け加工をし直してまたお使いいただけるようにしました。木地直しをして設置可能となった前卓や宗紋の入った御文章箱(ごぶんしょうばこ)・和讃箱(わさんばこ)は、塗り箔蒔絵加工を施しました。輪灯や灯篭、隅瓔珞(すみようらく)・りん等は新調いただきました。

※隅瓔珞(すみようらく):上から下がっているキラキラした飾りの仏具

 

側面から見てもぴったりですね。幅も奥行きもある大きなお仏壇で、もう少し仏間の高さが足りなければ入らないところでしたが、もともとここに納められることが決まっていたような、ぴったりのサイズ感です。

 

多数の工程を経てお時間はかかりましたが、お母様の7回忌を来月に控えて、無事にご納品することができました。お客様は、お母様の7回忌を迎えるにあたり、ここまで健康にお仕事を続けられたことを阿弥陀様やご先祖様に感謝し、そのお礼として、仏壇をきれいにしたいと思い立たれたそうです。そんな時にちょうどぴったりのお仏壇が当店にあり、とてもよいタイミングでご縁を繋ぐことができました。ご希望に沿ったお仏壇をご用意することができ、喜んでいただけて本当にうれしく思っております。このたびは当店にご相談いただきまして、ありがとうございました。何かお困りの際には、どうぞお気軽にお声かけくださいませ。

今回は、ご不要になってお引き取りさせていただいたお仏壇を、新品同様にきれいにお洗濯してご納品するという珍しいケースでした。この方法は、新品のお仏壇を求めるのが費用的に難しい方などには、とても良い方法だと考えております。もちろん、お客様のお気持ちやご希望をうかがい、実際にご覧いただくなどしてきちんと確認することは必須ですが、近年は中古のお仏壇に対する意識も変わってきているように感じます。処分してしまうにはもったいないと感じるようないいお仏壇を、必要とされている方に使っていただき、再び活かされるのは素敵なことだと思いますし、これから増えていくかもしれません。今後も多様な選択肢の一つとして、ご希望に応じてご提案できればと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

※お仏壇の「洗濯・洗浄」についてはこちらをごらんください>>「洗濯・洗浄

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